はじめに
上級者の分析は“当てるもの”ではありません。
むしろ、外れることを前提にした分析と言っても良いでしょう。
彼らは相場が「この後どちらに動くか」を予想しているのではなく、
複数の未来シナリオを同時に描き、どの未来が発生しても対応できる状態を作っているのです。
この「シナリオ分岐思考」が身に付くと、分析の精度はもちろん、メンタルの安定度が一気に上級者のレベルへと引き上がります。
今回は、プロが実践する“相場の複数未来を描く技術”を徹底解説します。
● 上級者の分析は「一本の予想」ではなく「分岐図」
初心者ほど「上に行く?下に行く?」という二択の思考になりがちです。
しかし、プロの頭の中は以下のようになっています。
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もし上昇した場合のパターンA
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上げても弱ければパターンB
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下落した場合のパターンC
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下に抜けても失速すればパターンD
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どちらにも行かずレンジならパターンE
このように、常に5つ以上の未来を想定した上で、どれが実現したかを淡々と確認するだけです。
つまり上級者は「当てている」のではなく「分岐を管理している」のです。
● シナリオ分岐を設計するための“材料”
シナリオ作りに必要なのは、以下の3つの要素。
① 価格構造(高値・安値・ネックライン)
これは“市場の骨格”。
どこを超えれば強いか、どこを割れば弱いか、その境目を明確にします。
② 流動性の溜まり場
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直近高値・安値の裏
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節目
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大口の狩りポイント
ここはシナリオの分岐点として必ず考慮。
③ ボラティリティ(市場のエネルギー)
強いトレンドか、疲れが出ているか、レンジに入りそうか。
“エネルギーの量”で未来の動きは大きく変わります。
● 分岐シナリオの実例
例えば相場が上昇トレンドの押し目形成中だとします。
上級者の頭の中では次のような分岐が描かれています。
【A】押し目からそのまま上昇
→ トレンド継続の形。優位性高。
【B】押し目は作るが弱い上昇
→ ダブルトップになる可能性。買わない。
【C】押し目を割り、流動性狩り後に反転
→ “最高の買い場”。本命。
【D】押し目を割り、戻り売りに転換
→ 完全にトレンド反転。売りに切り替え。
【E】ボラ収束しレンジ化
→ 様子見。無理して入らない。
これらを同時に持っておくことで、
どの未来になっても悩まずに行動できる=感情を排除できる
というメリットがあります。
● 「一つの未来を信じる人」は負ける
多くの人がトレードで感情的になるのは、
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当てにいっている
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一つの未来しか想像していない
この2つが原因です。
「下がると思ってるから、損切りしたくない」
「上がるはずだから、まだ持つ」
これらは“未来への依存”です。
上級者は、未来に依存しません。
● シナリオ分岐は「ゲーム設計」
相場分析は“戦略ゲーム”に近く、あなたはプレイヤーではなくゲームマスターです。
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未来Aなら買う
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未来Bなら買わない
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未来Cなら強く買う
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未来Dなら売りに回る
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未来Eなら何もしない
このように、
最初から自分の行動を決めておくことで、裁量のブレを消す
これが勝ち続けるためのプロの思考です。
最後に
シナリオ分岐思考は、上級者の最も重要なスキルの一つです。
「当てるトレード」から「対応するトレード」へ移行することで、感情に左右されない戦略的な判断が可能になります。
相場の複数未来を描き、それぞれの行動を事前に決めておく。
これだけでトレードの質は別次元へと進化します。



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